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『種痘の扉』第一章七節

  • 執筆者の写真: 佐是 恒淳
    佐是 恒淳
  • 2022年12月2日
  • 読了時間: 2分

 第一章「遠鳴」七節「ヲホツク海」では、長崎に来航したロシア艦艦長クルーゼンシュテルンの視点から、ロシアのオホーツク海進出の経緯とロシアが日本との貿易を望む理由が説明されます。

 ヴァイキングがキエフ公国を建てたころ、すでに黒貂を始めとする毛皮獣を狩っていたようです。ロシア建国の前からヴァイキングの後裔を含むロシア人はシベリアを東進し、ついにオホーツク海を経て、18世紀には北太平洋でラッコ猟が確立します。


 ロシアのシベリア東進においてコサックの首長イェルマークが活躍したことを高校の世界史で教わりましたが、この名前は、ゼレンスキー大統領によりウクライナ大統領府長官に任命されたアンドリー・イェルマーク氏によって、思い出す契機となりました。ウクライナはコサックの故地なのです。さらに連想を許せば、日露戦争において秋山好古率いる日本騎兵旅団が黒溝台で死闘を戦った相手がコサック騎兵でした。現在、ウクライナがロシアを相手に善戦するのも頷けます。彼らは勇猛なコサックの末裔です。

 ヴァイキングに連なるような遠い歴史があって、19世紀初頭、日本とロシアが接触し、日本の港で食糧を買いたいというロシアの一方的な要求によって、日露関係は不幸な形で始まります。それを見ている蘭商館長ドゥーフは、ロシアをオランダによる対日貿易独占の脅威とみなし、表面的に対ロ関係を荒立てず、裏ではロシアの意図を挫くように動きます。


 日本はロシアと関わって、対立的な関係が長く、不祥事が多く続きますが、始まりからそうだったようです。この節で触れたロシアの歴史は『北からの世界史』(宮崎正勝著、原書房2013年)を参考に書きました。とても面白い本でした。





2 Comments


北薗 洋藏
北薗 洋藏
Dec 05, 2022

佐是様、今回も楽しみながら勉強させていただきました。


黒貂を獲りつくすほどの勢いで東進し今度は海獺猟へ、現在は石油、天然ガスなどの地下資源を国力の基としているロシア、お国柄は簡単には変わらないようです。自然との共生という考え方はロシア人には希薄のように感じます。

この後、日本は他国から開国を求められることになると思いますが、諸外国にとって開港・通商に関する日本の地理的重要性を理解することが出来たように思います。

クルーゼンシュテルンがどのようにレザノフと対峙していくのか、レザノフの暗躍に対するドゥーフの対抗策も楽しみになりました。

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佐是 恒淳
佐是 恒淳
Dec 05, 2022
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北薗様、

コメントありがとうございます。

どの国も、二、三百年遡っても変わらないお国柄があるのかもしれません。ロシアもそうですね。ツァーリ治める帝政から、レーニン・スターリン治める共産党一党独裁から、選挙あっても独裁続く現ロシアまで、何か共通するものがありますよね。人を大切にしない国、まして毛皮獣などお金にしか見えない国です。自然との共生という考え方から最も遠い国と言えるかもしれません。

家内の叔父は終戦後、シベリア抑留中に亡くなりました。滿洲では日本の民間人が多く亡くなりました。日本人は、いろいろな思いをロシアに抱いています。その始まりを知ることは意義あると思うのは私だけではないと思います。


                                 恒淳


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