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​『意次外伝』

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意次の時代は、幕府創建以来続いた右肩上がりの経済が次の相に転移する変革期だと言えます。米価安の諸色高となって、武家は支配層でありながら貧窮化していくありさま、幕府の財政が揺らぐこともありました。戦国の遺風はとおに薄れ、もはや戰がないため、武士は戦士ではなくなりました。恵まれれば御役をえて行政官になり、多くの武士はすることもない禄を食むだけの存在になりました。貴穀賤金の風潮はすたれ、武技を貴ぶ風も衰えていきました。戦がないのだから、それでよしとする開明的な人々と、武士が魂を失う風潮を嘆く人々が共存していました。

 

文化は百花繚乱と花開き、元禄以来、楽しみの多い時代となりました。浮世絵、歌舞伎、寄席芸、出版、衣装風俗、美食料亭、地方名産などに大きな発展がみられました。現在、日本の各地に特産品があってその土地ならではの楽しみがあります。地方の特産品という考え方は享保の頃から現れ、米以外の商品(換金)作物として始まり、宝暦、明和、安永と意次の時代に大きく発展しました。各地特産品のアイデアは現在まで受け継がれ、外国人旅行者を喜ばせています。

 

こういう時代を政治史、経済史の観点から理解すれば、次は庶民の世相にも目がいくものです。『意次外伝』と銘打って、庶民の世俗世界にも分け入ってみたいと考えました。一つのテーマ、一人の主人公にまつわる江戸社会の通俗世相に焦点をあわせたスピンアウトの連作集と位置付けました。大きな歴史は外しませんが、記録の残らない庶民の物語なので筆者の想像を膨らませました。連作集として完成していませんが、まずは宝暦の初めに出た講釈師(今の講談師)馬場文耕を取り上げました。原稿用紙70枚の短編です。時に本編『将軍家重の深謀-意次伝』​の関連個所を参考にされながら、この掌編にもお目をお通し下されば、これに過ぐる喜びはありません。

目次 意次外伝

​目次 意次外伝

​第一話 醜聞を甚振るー馬場文耕

 第一節 女形を占う・・・・・

 第二節 旗本を嘲る・・・・よむ

 第三節 大名を腐す・・・・・よむ

​ 第四節 幕府を諷す・・・・・よむ

​ 参考文献・・・・・・・・・・よむ

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